アイヌ工芸とインディアンビーズ

Posted By on 2016年9月3日

テキスタイルをしているSさんが「アイヌ伝統の古い織にインディアンのビーズが刺され(刺繍され)ている」と言って、その資料を届けてくれました。資料(写真)の上に手持ちのビーズを置いてみると確かに同じビーズです。

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短い解説文では

「アイヌの服飾文化を華やかにしていたのにガラス玉がある。ガラス玉でも小粒のビーズは被り物や衣服を装飾するとともに身を守る護符としていた。ガラス玉は交易品として手に入れた貴重なもので、本州やアジア大陸、遠くはオランダ、ロシアなどから世界の民族の手をへてアイヌの人たちに届いた宝物でもあった」

となっていて、年代は記されていない。アイヌの人たちの交易(TORADE)範囲が広がったのは江戸時代中期からとされるので、1600年代後半から1700年頃でしょうか。

一方、インディアン(ネイティブアメリカン・北米先住民)にこのビーズが入ってきたのは、スペイン人が南西部に進出してきた1600年頃で1612年以降はイギリス人植民者との対立もあり、まさに苦難の歴史ですが、ガラスビーズについてはポルトガル→オランダ→スペイン+メキシコ→インディアンといった流れで、やはり交易品として入ったものです。

さて、現代日本には終戦後(1945年)アメリカの経済支援とともに生活文化でも大きな影響を受け、経済が安定してきた1960年頃から流行のファッションの一部としてインディアンクラフト&ジェリーも入り始め、これに使われていたビーズだったので商習慣的にインディアンビーズと呼び定着しました。そのためアメリカ製と思っている方も多いようです。

かつてのアイヌの人々や北米先住民にとっては貴重な交易品で、時には通貨の代わりをなしたので英語呼びのTRADE-BEADS(トレードビーズ)いうのが適切なのかもしれません。古い時代、このビーズがアイヌ工芸との関わりがあった事実も理解できます。きっと高貴な一部の人のみが身につけたものでしょう。

アメリカのインディアンクラフト解説書(1966発刊)では Trade-beads と表記されております。ビーズの刺し方(刺繍)は、スキルのひとつとして今日に繋がっており、日本ではアメリカンビーズワークと言う方もおります。

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*ビーズのサイズは、往時のものは不揃いですが、直径6~8mmのものをPONY BEADS、1,5~2mmのものはSEED BEADSと呼び分けられております。

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